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その時、突然練吉は、房一がさう云ひかけたまゝ当惑した表情になつたのを見た。
房一はその時逸いち早く、横に寝かされている男の投げ出した手首に血がかすりついているのを、そして寝ながら立てている片足のズボンの膝のあたりにもどす黒い斑点の沁みているのを見てとつた。
「なに、ろくでもない用事で帰つたもんですから、どこへも失礼していたんです」
と、房一はもう一度感心した。
この時さう云ひながら座に入つて来た者があつた。それは今泉だつた。
――「やあ、おいでなさい。わたし相沢です」
「だいぶ、様子が変りましたな」
「やっぱり半之丞の子だったですな。瓜うり二つと言っても好よかったですから。」
「先生!」
「便所に化物が出たそうです。」
それは正文にかゝりつけの患家だつた。
看護婦がそつと上つて来た。
「あ、神原の喜作さんだ」